【書評】インテグラル理論
概要
- 人間の思考の根底に価値観とはどのように形成されている、歴史的にどのように発展してきたのか、そしていま現在はどのような価値観が世の中に広がっているのか、あらゆる思想主義・科学・宗教を踏まえた上で「万物の理論」を作成しようと試みた本(実際は理論というより調査レポートに近い)
- 特にポストモダニズム以後の現代哲学・科学について調査されているところが評価に値する
- その他本書の位置づけについては以下を参照
インテグラル理論 - JMAM 日本能率協会マネジメントセンター 「人・組織・経営の変化」を支援するJMAMの書籍
発達モデルの調査
- 人間の思考を理論化するためには人間の思考の発展の仕方を認識する必要がある
- そのため本書では発達理論について最初に触れられている
- 結局のところ世の中に広まっている有名な発達モデルはどれも似通っている
- 基本的にどの発達モデルも膨大な調査とデータの元作成されている
- 多少の不一致はあれど、「心の成長や発達とは一連の段階が次々と開きだされていく」という観点のもと発達モデルが作成されている
- 発達とは「自分自身に没入している子供において次第に自己中心性が減少していくことである」と心理学者の間では定義されている
- そこで本書ではこの2つの観点が踏まえられている発達モデルであるスパイラルダイナミクスを採用している
ポストモダニズム、脱構築主義、多元的相対主義の要点(1900年代後半)
- あらゆる真理はその文化の中だけで成立するものである
- 「超越的な」真理というものは存在しない
- あらゆる階層や順位付けは抑圧と周縁化のためのものでしかない
- 普遍的な真理というものは存在しない
- ただし、これらの主張のみはこれらの例外として認められる
(今日では過度な脱構築主義、多元的相対主義は負の側面があることが知られている)
(たとえ脱構築主義でも結局は何かしらの正当化している階層を持っている)
インテグラル理論(下図参照)
- 世界とは本当は1つの全体でありどこにも分断はなく、あらゆる面において互いに関係し合っている
- インテグラル理論ではホロン(holon)という概念を構成要素に据えている
- ホロンとはそれ自体として1つの全体であるが同時に他の部分とっての部分でもある
現代における科学と宗教の関係性に対する主な見解の立場
1.科学は宗教をしている
宗教とは、端的に言ってただの迷信であり過去の遺物であるに過ぎない
2.宗教は科学を否定している
科学とはこの堕落した世界を構成する要素であるにすぎず、本当の真実には決して辿り着けない
3.科学と宗教は存在の異なる領域を扱っており、両者が平和的に共存することは可能である。
どちらも統合できないビッグピクチャーである(多元論主義)
4.科学そのものがスピリットの存在を支持している
多くの科学的事実や科学的発見によってスピリチュアルな現実は直接に指し示されてる
5. 科学が与えるのは世界に関する知識ではなく、世界に関する一つの解釈に過ぎない。したがって、科学の妥当性とは、芸術や詩の妥当性と全く同程度である
典型的なポストモダンの立場(上記参照)